三題噺

Presented by S. Kawano

ひとひらの言葉が時間を措定し、いちようの言葉が空間を拓き、いっぺんの言葉がそれらを逃れようと身をよじります。

#012 20170212  New

図書館の屋上で午睡をしようとして寝転がった。妙に青々とした人工芝のうえで仰向けになり、日差しをよけるために顔面に本を伏せた。顔の上に本を載せたまま目を開くと …READ MORE

#011 20161106

「要塞みたいだねぇ」 壮年のダンサーはそう言って、死にかけた老人のように床に崩れ折れたかと思うと、赤子のゴム毬のように床を跳ね上がり宙返りする。私は何年生きても毎朝毎朝右手と右脚を …READ MORE

#010 20160918

日本じゅうの天文台の観測データがまるっきり反転してしまったと、困惑顔のニュースキャスターは言った。TVは引き続いて、白い髭をはやした天文学者を映し出した。いったいどんなバグが起きたのか …READ MORE

#009 20160911 

名前を呼ばれた気がして暖かな布団の中で目を開けると、愛おしい人が私の頸動脈に噛み付こうとしているのだった。心地よい甘噛みを期待して相手の脚に自分の脚をからめたが、そのときには …READ MORE

#008 20160904 

仄暗い店内には磨きあげられたグラスが何列にも渡って吊り下げられ、表面には白い光が規則正しくちらついている。カウンターに座る女はふくよかな脚を小さくぶらつかせ、飴色のテーブルに …READ MORE

#007 20160821

真夏の入道雲の裏側にはまっしろな大理石でできた荘厳な城がそびえていて、夏休みに暇を持てあました子どもたちは人知れずその城に通っている。城に足を踏み入れたらばランドセルは …READ MORE

#006 20160814

赤ワインの味のする水を立て続けに数杯飲んだあと蛇口を閉じようとすると、捻っても捻っても止まらない。水栓が壊れてしまったのか、ものすごい水圧で赤ワインが――カメレオンに言わせれば …READ MORE

#005 20160807

奇妙なことだけれども、この晩わたしは何をも見なかったということを、まずは明言しておかねばならない。さもなくば、ある晩についてわたしが何か記すとき、わたしは何かしらを見たのだと …READ MORE

#004 20160724

光ではなく影を写生せよと、耳許で蜜のような匂やかな声が囁いている。黒い紙に白墨で影を写し取りなさい。影をもとめて息絶えたような時間に抜き足差し足で忍び込む。擦り切れた芝生に …READ MORE

#003 20160717

深々とお辞儀をして顔を上げると、客席の暗がりにカッコウの集団が紛れている。聴衆の顔ぶれを確かめるつもりなどないが、おのずと目についてしまう。来る日も来る日もけたたましい鳴き声を…READ MORE

#002 20160710

身体を著しく傷付けられたものたちが次々と運び込まれてくる。両腕を吹き飛ばされたもの。千切れた尾を片手に持って震えているもの。広範囲にわたって皮膚を失ったもの。翼を粉々に …READ MORE

#001 20160703

どれだけ進んでもいばらの生垣は両脇に屹立していた。あまりに高いので天を見通すこともできない。いばらの蔓は太く堅く木質化していて、脅迫する短剣のような棘がぎっしりと生えている。 …READ MORE

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