三題噺 #002

投稿日:

20160710 S. Kawano

身体を著しく傷付けられたものたちが次々と運び込まれてくる。両腕を吹き飛ばされたもの。千切れた尾を片手に持って震えているもの。広範囲にわたって皮膚を失ったもの。翼を粉々に複雑骨折したもの。

何かしらの医術に明るいものたちは真珠のような涙をぼろぼろと流しながら、傷ついたものたちを介抱する。どの身体も冷え切って循環が途絶えかけている。

「尻尾をよこしなさい、早く」
「嫌だ、尻尾がひっついたってどうしようもないんだ」
「早く、早くしないと血管が繋がりませんよ」
「もういいんだ、別に構わないんだ」

戦士たちは生きるのを拒んで傷口から生命を滔々と垂れ流す。医術を知るものたちはそれを見て涙管から悲しみを尚更溢れさせる。

外を見やると一面の雪景色が死んだ生命に染め抜かれている。大地は氷に閉ざされ、氷雪が渦を巻きながら血の通ったものたちを傷つけてゆく。鋭い氷のつぶてが彼らの肉体をところかまわず粉砕し、氷の薄片は分厚い毛皮をもやすやすと切り裂いて血肉をえぐりだす。

「しっかりしてください」
「もういいんだ、永遠に眠りたいんだ」

戦況は悪化する一方だった。懸命に治療を試みるものたちは、戦士たちが次々と生を放棄するのに対して打つ手を知らなかった。絶望が一同に蔓延していた。氷雪は相変わらず横暴の限りを尽くしていた。

突如、医術師のふりをして銃後で暖をとっていた二本足のいきものが、ゆらりと立ち上がって叫ぶ。

「我発見せり!」

医術師たちは信じられない思いで顔をひきつらせそのいきものを見やった。彼の叫んだのは敗北宣言に等しかった。微かな希望をも否定し勝利をあっさりと手放すことを敵に認めたのとまったく同じだった。

「この事態の所以は——」

その叫びに呼応するようにして敵方の攻撃はことさら勢いを増す。真珠のような涙もあまりの寒冷に固く凍りついて流れるのをやめた。遂には戦士も市民も境なく蹂躙され、雪嵐はあらゆる色の体液を巻き上げてどす黒く濁る。濁った氷雪が、すべての生命を冷たく閉ざしてゆく。

配管 – N
かき氷 – Y
BECAUSE – X

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